13…確信

蓮side

翌日、大学に行ってすぐに松本を探した

結局見つからず、最後の講義が終わって廊下を歩いてると


「よお」


後ろから神崎と、松本が平然と歩いてくる

思わず駆け寄って松本の手を掴み


「ちょっと顔貸せ」

「桜井、どうし「神崎はここに居ろ」」


近くの空き教室に松本を連れ込む

振り返れば松本が俺を睨み


「何だ」

「…分かってんだろ」

「分からないから聞いてる」

「……昨日、俺を庇って銃弾を受けたよな」

「…何の話だ」

「服装、髪型、背格好、声、間違いなくお前だ」

「…」

「何で、あんな事が出来る」

「俺は付き人だ、ある程度の武術の心得はある」

「俺が言ってんのはそんな事じゃねぇ

 俺の前に急に現れたり、銃や男を消したりした

 何でそんな事が出来る」


そんな事が出来るのは、アイツだけだろ

松本に近寄り


「答えろよ」

「…」


松本を見下ろすと肩に白いモノが見える


「! これは…」

「お〜い、まだか?」


松本がドアに向かう


「おい話は…」


止めようと手首を掴む


「!」

「お前と話す事は無い」


手を払われ、バタンとドアを閉められた

 

家に帰り、考える

あの白いのは、包帯だ

もし栞だったら、治せるから包帯なんて必要無い

でも、あの時掴んだ手首は…栞と同じだった

栞なら昨日の事は全部納得がいく

だとしたら、何で包帯なんかしてんだ

…まさか、傷が治りきってないのか

あの傷なら、最低限の処置だけで気を失ったかもしれねぇ

ギュッと手を握る

俺の前から消えた後、1人で苦しみながら…


「何で1人でっ…、何で俺の前から消えたんだよ…っ」


いや、違う

俺が…そうさせたのか

あの披露宴の日から、栞は苦しんでんだ

また、1人で…


「…っ、くそっ!」


今更、後悔ばかりが残る

 

でも、そう考えると…、何で栞が神崎の付き人になってる

…アイツは神崎家当主

栞の素性を調べようと思えばきっと調べれる

桜井組の事も

栞が鷹だと知った上で桜井組に護衛の依頼をしてきたとしたら…


「神崎…っ」


何も知らない俺に、わざと接触してきやがったな

そして栞が作った弁当を俺の前で…!

…でもおかしい

松本が栞だと気付けなかった

思い出せば思い出す程、簡単な変装だ

神崎が分からねぇように力使って、俺にバレねぇようにしてたか


…にしても、神崎は俺と同じ大学で学部も同じ

そんな事は依頼が来た時点で兄貴が調べてる筈だ

それでも受けて、神崎の護衛をしてる

……仕事は仕事、私情は挟まねぇんだろうな

まあいい、もう分かったんだ

 

 

神崎 修二side

栞が付き人になって数日後、わざと桜井蓮に話し掛けた

…にしても、割と簡単な男装なのに全然バレないな

カフェを出てく時、桜井が呼び止めた時は、お?と思ったが


護衛されて数日、結構危ない目に合ってる

神崎家当主になったってのもあるが

それ以外にも親父や親父の経営する会社絡みでだ

栞は常に警戒し、何が起きても冷静に対処する

聞いてた通り、腕は立つし頭も回る

披露宴の時、脅し的な感じで迫っちまったが

好きになったのはホントだ

恋人がいるって聞いて、でもどうしても手に入れたくて

あんな、取引して…

今も仕事だから、常に側にいてくれる

 

大学が午前中に終わり、部屋で昼寝し夕方起きてリビングに行くと

変わりなく栞が夕飯を作ってくれてる

 

翌日も大学に行き、あと1つで講義が終わる頃

廊下を歩いてると前方に桜井が


「よお」


桜井が駆け寄って栞の手を掴み


「ちょっと顔貸せ」

「桜井、どうし「神崎はここに居ろ」」


近くの空き教室に栞を連れ込む

…とうとう気づいたか?

まあ俺はどっちでもいんだけど

 

数分経った、そろそろいいか?


「お〜い、まだか?」


すると栞が出てくる


「何してたんだ?」

「…貴方とどう知り合ったか聞かれただけです」

「ふ〜ん、で?」

「関係無いと答えました。もう行きましょう」


それから大学では、桜井も一緒にいるようになった

桜井は栞に何かしら話し掛けるが、栞が返事を返すのは稀だ