12…疑惑

蓮side

翌日、大学で講義が無い時間


「桜井、中庭行かねぇか?」


神崎に誘われ、中庭に行くと


「ちょっと寝る」


神崎は寝転がり、横に松本が座る

俺は松本の横に座り、ジッと松本を見る


「……何だ」

「! いや、あ〜、

 松本、お前、神崎の付き人って事は、知り合いなんだろ?」

「……初対面だ」

「!?」


初対面の奴が付き人になるなんて

そんな事があるのか?


「お前、どうやって付き人になったんだ」

「…お前には関係無ぇだろ」


関係無い、久し振りに聞いたな


「その言葉、高校時代を思い出すな」

「…」

「気になる奴がいて、ソイツの事を知りたいのに関係無いって言われ続けたんだ

 でもソレは、俺や周りの奴等を自分の問題に巻き込まねぇようにする為だった」

「…」

「お前も他人にはあんまり話はしなさそうだから、何かと溜め込みそうだな

 神崎とは、ちゃんと話せてんのか?」

「…さぁな」


神崎が起きるまで、松本と話した

つっても一方的に話して、松本は相槌くらいだが

 

「あ〜よく寝た」


神崎が目を覚まし、起き上がる

すると

松本が急に動き、パシッと神崎の後ろで何かを掴む


「!?」


何だ、今の動き

振り向くと、数人が慌てて逃げてく

松本が手を開くと、拳サイズの石だ

神崎は目を見開き、すぐに細め


「ご苦労さん」


松本の頭を撫でる、松本はその手を払い周りを警戒する

 

大学は午前中で終わり、疑問を抱えながら家に帰る

親父とお袋は会合で居ない、組員も少ないな

兄貴は仕事、紫音はまだ高校だ

 

部屋に戻り、考える

初めて会った時、松本の誰も寄せ付けない雰囲気がなんとなく

栞と、雫として会ってた時の雰囲気と似てて…思わず呼び止めた

神崎は当主だ…当然護衛される立場

なのに初対面の奴が付き人

加えて松本の、あの動き…

俺は悶々と考え込み、近づいてくる気配に気付かないでいた

 

 

午前中に大学が終わり、家に帰る


「昼寝する」


神崎さんが自室で休み、私も自室へ戻った瞬間


「!」


桜井家にいる人物から妙な気を感じ《テレポート》する

 

 

蓮side

机に向かって考え込んでると、ガラ…と襖が開き


「蓮様」

「何だ」


立ち上がって、襖の方に体を向けた瞬間

パンッ!パンッ!パンッ!

銃声が鳴り響く

咄嗟に腕で顔を庇い、硝煙の臭いに顔を顰めるが

…おかしい、体に痛みが無い

腕を下ろすと


「!」


目の前に誰かが俺に背を向けて立ってる

この服装は


「ま、松本…か?」


松本はチラッと俺を見る

男は、俺の付き人をしてる奴だ

 

「な、何だお前ぇ!」


男が再び発砲しようとした瞬間

松本が男と距離を詰め、銃を掴むと


「!なっ…」


銃が塵になって消える


「な、何しやがった!?」


つかさず松本が男を押し倒し、腕を捻り上げる


「くそっ!離せっ!この…!バケモンがぁっ!」

「!」


松本は無表情で男を気絶させ、立ち上がると男を消した


「お、お前…、松本…だよな」

「…」


松本は目を合わせようとしない


「お前の、今の…まるで、」


近寄ろうとしたら


「ゴホ…ッ」


松本が血を吐き、足元にはポタポタと血溜まりが

肺を撃たれたのか!?

見れば、服一面が血で染まってる

松本は襖に凭れながらズルズルと座り込む


「松本!」


松本に駆け寄り、肩を掴む


「はぁ…はぁ…ゴホッ」

「今救急車呼ぶからな!」


スマホを出すと、松本に掴まれ止められる


「何やってんだっ離せ…!」


松本は脂汗をかきながら、俺とは目を合わせず


「…呼ぶな」

「!」


フッと目の前から消えた

まるで、栞みたいだ…

 

 

神崎家の自室に戻った瞬間、異空間を作る


「はぁ…はぁ…はぁ…」


座り込み、服をギュッと握り締め、痛みに耐える

弾は蓮に届かない様に貫通させなかった

サイコメトリー》で弾の位置を把握して消せれば楽だけど

今の体力と気力では把握出来ても、弾だけを消す精密なコントロールが出来ない

取り出すしかない

目を閉じて位置を把握し、被弾した箇所に手を当て《サイコキネシス》で引っ張り出す

ズ…ズズ…と弾が動くのが分かる、その音が聞こえる度に激痛が走る


「うぁ…!あ…!!」


あと少し…っ、あと少しでっ

トン…と掌に弾が当たり、カンッと下で弾む音が

残りも何とか取り除く

肺や内臓を修復したとこで、力を使う気力が無くなった

なんとかガーゼや包帯で止血し


「お、わっt…」


意識を手放した