25…私の過去(3)

紫音side

姉さん…

無表情だったけど、俺には分かる

コンッコンッ


「姉さん俺、紫音」


返事は無い


「入るよ?」


姉さんはベッドで丸まってる


「姉さん」


姉さんは怯えてるのか、ビクッと反応する


「近くに、側に行ってもいい?」


ベッドに乗り、正面に座る

姉さんは俯いて、震えてる

安心させる様に優しく


「姉さん」


姉さんがゆっくり顔を上げる

泣き腫らした目、今でも頰に涙が伝ってる


「…っ見ないで」


また俯く

俺は姉さんを抱き締め、頭を撫でる


「これなら見えないよ。だから…話して?」

「…」


姉さんはポツポツと小さな声で話し始めた


「…。それで、後ろにいた奴が、倒れる時、私のパーカーを掴んだの。

    正面にいた男が私を見て

    『テメェ、何なんだっその体…っ!気持ち悪りぃ!』」

「!?」

「改めて、思い知った。やっぱり私は、穢れてる。

    紫音や蓮達と一緒にいちゃいけない人間だって」

「!  そんな事!「あるの」」

「私は、奴等に言われるがまま、沢山の…罪の無い人の命を奪ってきた。

    穢れてるの

    貴方達の様な綺麗な人間の側にいていい存在じゃないの」


姉さんは俺から離れ、ベッドを降りると服を脱ぎ始め下着姿に


「!?」


俺はバッと目を逸らす


「紫音、見て」


恐る恐る視線を向け、目を見開く

体の至るところに傷が

姉さんがクルッと背を向ける

背中には、肩から腰に掛けて大きな切り傷が

姉さんは声と肩を震わせ、俺に問う


「こんなのを見ても、そんな事無いって言える?」

「…」

「蓮にもね?見られた、だから記憶を無くして眠ってもらった」


俺は近寄って肩を掴み、ビクッと肩を震わせる姉さんを振り向かせる

俯いて涙を流しながら俺の答えを待ってる

姉さんが話してくれた過去

人の命を奪うのは、どんな理由があっても、絶対に許されない

でも、姉さんは後悔してる…苦しんでる


「姉さんは、悔やんでる。

    命を奪ってしまった人達の為に涙を流してる…苦しんでる

    例え、姉さんが穢れてても、傷を見ても気持ち悪いなんて思わない。

    周りが、姉さん自身が何を言ようが、何を見せられようが…俺は離れない」

「紫音」


姉さんを抱き締める


「ありがと、姉さん。打ち明けてくれて。もう…1人で抱え込まなくていんだよ」

「紫音…紫音っ、紫音っ!」


姉さんは泣き疲れて眠った

ベッドに休ませ、近くの椅子に座る

姉さんの髪を撫でてると肩の傷が見える

さっき見た、腰まである傷


『致命傷じゃない限り、(力で)治すのは禁じられたから』


グッと手を握る

爪が皮膚に食い込む


「こんなの…!致命傷じゃない訳ないだろ…っ!」


下手すれば、死んでたかもしれない…っ

俺でも重傷だと分かるのにっ!

今まで、どれだけの痛さや苦しみを…1人で

    

『未だにその癖が残ってる』


怪我をしても、命に関わらなければ、反射的に能力は使わないって事か

姉さんは白狐の姫だ、そうそう怪我はしない…させない

けど、注意はしておかないと

コンッコンッ


「俺だ」


この声は蓮


「入るぞ」


蓮に見られる訳にはいかない

なんとか傷を隠す