悪魔(3)

城を出ると、街の皆が集まって武器を持ってる


「…え」

「お、…おい」

「み…んな?」


皆はキッと俺達を睨みつけ


「話し掛けるなっ!人殺しがっ!!」

「「「!?」」」


ビクッ!と栞が怯える


「よくも国王様を…っ!クロト様を酷い目に合わせたなっ!?」

「アンタなんか…っ、シオリ様じゃないっ!

 家族を殺す奴がシオリ様なもんかぁっ!!」

「殺してやるっ!お前等なんか殺してやるっ!!」


ジリ…ジリ…と殺気の篭る目で近づいて来る


「な…っ、何で?…っ、…どうして!?」

「どうしちまったんだよっ!?」

「お、お願い…っ、皆…っ、話を…っ」

「黙れ人殺し!!誰もお前の言う事なんか信じねぇよっ!!!

 シオリ様のフリなんかしやがってっ!」

「魔物だわっ!魔物がシオリ様のフリをしてるんだわっ!!」

「そうだ!俺達を騙しやがってっ!!さっさと死ねっこのバケモンがぁっ!!!」

「!?」


栞が顔を蒼白にしてガタガタッと震える

俺は栞をギュッと抱き締め、皆から隠す


「はっ…はっ…はっ…!」

「大丈夫だ…っ!俺達が側にいるっ!」


紫音は怒りの目で


「姉さんに死ねなんて…、バケモノだって?」


ユラ…と紫音が皆に向かって歩く


「!? 紫音!止めろぉっ!!」

「居たぞぉっ!」


さっきの兵士がっ…!

くそっ、どうするっ!?


〔もう我慢出来ぬっ!!〕


ゼルファ…っ!?

バキッバキッバキッ!と何かが壊れる音が聞こえ、栞が白く光る


「…ぅ…っ」


栞は胸を抑えて苦しそうにしてる


「栞!?」

「姉さんっ!?」


紫音が駆け寄ると、白い影が頭上に広がっていく

影が次第にドラゴンの形になっていき

ゼルファが本来の大きさで現れた


〔グルルッ…!!!〕


唸り声を上げ、皆を威嚇する


「ド…ッ!?ドラゴン!?」

「こんなのを宿してるなんてっ…、やっぱりバケモノだっ!!!」


栞がビクッ!と肩を震わせ、涙を流して俺にしがみつく


〔貴様等…っ!我が家族を愚弄する事は許さんっ!!〕


ゼルファが口を開け、力を込める


「うわぁっ!?逃げろぉ!」


皆が慌てて逃げていく


〔逃すかっ!〕

「だっ、駄目っ!止め…てっ!」


栞が震えながらゼルファを止める


〔止めるなっ!〕

「お願…いっ!皆を、傷付け…ない、で…っ!」

〔だが此奴等はお主をっ!〕

「お願いっ!!」

〔…っ、分かった。ならばこの国を出るぞ!」


周りが白く光り、目を瞑る

 

 

目を開けば

そこはゼルファと出会った森


〔ここならば大丈夫であろう〕

「…、助かった…」


紫音の言葉で、体の力が抜ける

ドサッ…と座り込み、腕の中で震える栞を見る


「…、栞」


栞は涙を流しながら、怯えの表情で


「…っ、れ…蓮っ…!」


俺にギュッとしがみ付き、紫音の腕を掴み


「お…ねがっ…!お願いっ…!離れて、かない、で…っ!!

 ひと…りに…っ、しないでっ…!!」

「大丈夫だよ、姉さん」

「何があっても、側にいるから」

「…っ、…っぅ…」


すると

精霊が出てくる


〔やっと、出てこれました…〕


ラルフが栞の涙をペロッと舐め取る


〔先程、我が無理矢理出てきた故にシオリに負担を掛けてしまった

 すまなかった…〕

「…ううん。ゼルファが出てきてくれたから、私達は助かった

 ありがとう」


…、さっきの音と栞が苦しんでたのは、そういう事か


〔私達があの部屋に入っていたら、悪魔に魂を取り込まれていたでしょう

 こうしてお側にいられるのは

 私達が生きているのは、シオリ様のお陰です〕

〔我等も〕

〔感謝致します〕


レノ、フェニア、ジルも

もしあの場で精霊が殺されてたら、俺達も死んでた


「栞」

「…ん?」

「俺達を護ってくれて、ありがとな」

「…うん」


栞は疲れて寝ちまった

大きくなったラルフのお腹に、栞を休ませる


「…お父…様…、兄…さ…ま…」

「…」


寝ながらも涙を流してる

そっと指で涙を拭う

レノが栞に寄り添い、頭に手を翳す


〔せめて寝ている時は、安らかに〕

「…そうだな、」


ゼルファが人型になり、フェニアが煙が出ない火を起こしてくれた

ゼルファが俺を見て


〔これからどうする?〕

「とりあえず今日はもう休もう。考えるのは明日だ」

〔うむ では夕食を摂らねばな〕

「…」


そういやぁ、夕飯がまだだった

気付いちまえば、腹が減ってくる


〔よし、我が果実を用意しよう〕

「「え?」」


ゼルファが目を瞑り、数分経つと

ガサッと草むらから音が


「「!」」

〔案ずるな〕


ピョコッと動物が出てきた

口に果物を咥えて近づいて来る


(どうぞ)

「!」


言葉が…

受け取って頭を撫でると、嬉しそうに目を瞑り去っていった


〔ここの動物達に果実を取ってくるよう頼んだ〕

「…そんな事も出来んだな…」

〔うむ〕


腹が膨れた頃

ラルフが俺達も寝せてくれるらしく、俺達が余裕で体を預けれるサイズになってくれた


「…、もし追手が来たら…」

〔大丈夫です

 私達精霊に眠りは必要ありません、安心してお休み下さい〕

「そっか。なら、頼む」


俺達は栞を挟んでラルフに体を預けた

あったかい尻尾が毛布代わりになって、すぐに眠りに落ちた

 

 

紫音side

翌日

皆、少しは気持ちを落ち着かせれたみたいだ


「とりあえず、ここから出ないと

 いつまでも休んではいられない」


姉さんはラルフを抱えて話してる


「まず服を変えよ

 アイツ…サタンの力がどこまで広がってるか分からないけど

 少なくとも私は、見た目を隠さないと」

「《ヒュプノ》を使えば済むんじゃねぇか?」

「…それなんだけど、気になってる事があって…」

「? 何?」

「昨日、アイツは言ってた

 『お前色んな力持ってんだな』って

 その後に黒い光を翳された…」


姉さんは俺と蓮を見ると、左目にペンタクルが

…でも


「姉さん、何に変わってる?」

「…顔を変えてる」

「…、駄目だ」


姉さんは困惑の表情で


「…じゃあ」


姉さんの視線が地面にある石に

すると

フワッと浮かび上がる


「《サイコキネシス》は使えるのか…」

「《テレポート》は?」


姉さんは目を伏せて集中するが


「…出来ない」

〔彼奴がシオリの力を封じたのなら

 使えぬのは恐らく、その2つだけであろう〕

「何で?」

〔使えぬのは、敵から己を偽る能力と…敵前から一瞬で消える能力

 我等の動向を探る際に、その力は邪魔であろう?

 そして言っておったな、シオリの闇の魔力を覚えたと〕


ゼルファが姉さんを見る


〔シオリ、お主が持つ闇で彼奴に居場所が知られるだろう

 闇というのは…一度生まれたら容易には無くせぬ

 そして、どれだけ己を制し上手く隠そうとも

 悪魔…それも頂点に位置する彼奴にとっては、見つけるのは容易い〕

「…」

「どうしろってんだよ」


ゼルファがレノに目配せすると

レノは白い狼の仮面を持って、姉さんに見せる

姉さんは手に持ち


「…コレは?」

〔レノとラルフに頼んでおいた、闇を隠す力を持つ…隠闇(かくぐら)の仮面だ

 お主等は最上位の契り…魂の献上をシオリにしておるのだろう?〕

「「!?」」


魂の、…献上?


〔それだけ深く繋がっておる精霊と神獣、…しかも光属性が作りし物ならば

 身に潜む闇を完全に抑え込めるであろう〕

「…分かった」

〔だが、仮面があると言っても

 お主自身も怒りや憎しみ…負の感情を易々と出さぬ様に心掛けるのだ〕


姉さんがラルフをギュッと抱き締め、レノを見る


「ありがとう」


姉さんが仮面を着けてみると

仮面は上半分だけで、鼻と口は隠れない


「ソレ着けてても見えるの?」

「うん。顔は隠せたし、色々と調達しに行こうか」

「「…うん(おう)」」


森を歩く中、蓮にコッソリ話し掛ける


「蓮…、蓮にも見えてる?」

「…、紫音にも見えてるんだな?」

「うん…、何でだろうね…」

「分からねぇが、好都合だな」

「そうだね」


俺達は森を出て、未知の国に入った

悪魔(2)

蓮side

栞が駆け出し、続いて俺達も剣を構えて動いた

瞬間


〔させねぇよ?〕


バチッ!と黒い霧に弾き返される

態勢を整えた瞬間

剣がクロトさんの背に突き刺さろうとする


「「…っ!!」」

「止めてぇええええええええっ!!!」


サイコキネシス》で寸前に止めれた

だが


「「!?」」


栞から黒い霧が出始める


〔シオリ!?止せっ!!〕

〔シオリ様!いけません!〕

〔我が主!お止め下さい!〕


ゼルファとレノ、ラルフの声が

アル達には聞こえてねぇみてぇだ


〔レン、シオン!我が主を止めろ!〕

〔シオリ様の負の感情により全属性の魔力が混ざり、闇の魔力と化しています!

 このままではシオリ様が危険です!〕

〔我等は今、シオリの意思で強制的に外に出れぬ…っ

 早くシオリを止めろ!〕

「栞!」

「姉さん!」


栞にあと少しで触れる…っ!

その瞬間

アルが剣に闇の魔力を一気に注ぎ込み

栞の力を押し退け、クロトさんの背中に僅かに刺さる


「!? やっ、めっろぉおおおおおおおおお…っ!!!」


栞の黒い霧がアルへと勢い良く放たれる


〔…フン〕


スゥ…と栞の黒い霧がアルに吸い込まれる


「「「!?」」」

〔闇は俺の糧にしかならん〕


アルから黒い霧が離れ、徐々に人型に

現れたのは…


〔よお、俺様はサタン。悪魔って言やぁ分かるか?〕

「「「!?」」」


あ…、あく…ま…っ!?


〔そこの女が、お前が殺したい奴だろ〕

「ああ」

「「!?」」


俺と紫音は栞の前に出る


「栞は殺させねぇ!」

「姉さんを殺すんなら、俺達を先に殺してみろっ!」


サタンは顎を摩り


〔ん〜、今すぐに殺してもいいが…

 その女、何か気になるんだよなぁ〜〕


フ…とサタンが消える


「! どこにっ(ダァンッ!!)」


振り向けば、栞がサタンに壁に叩きつけられ首を絞められてる


「!? テメッ…!!」

「離せっ…!!」

〔煩ぇ、黙ってろ〕


ピタ…と体が動かない…っ

声すら出せねぇ…っ!


〔なあ、お前…〕

「…っぅ」


栞は顔を顰め、サタンの腕を掴む


〔お前、ホントに人間か?〕

「「!?」」

「…、ど…いう、意味…っ」

〔な〜んか、コイツ等とは何かが違ぇんだよなぁ〕


サタンは舌舐めずりし


〔お前、面白ぇな〕


サタンが栞の頭に手を翳す


〔…へ〜、お前色んな力持ってんだな〕


翳してる手に黒い光が


「…な、にを…っ」

〔お前を今殺すのは止めだ〕

「!? おい!?どういうつもりだっ!?」

〔慌てんな

 さっきのでお前の闇の魔力は覚えた

 今は殺さねぇでおいてやるから、いつか俺様を殺しに来い

 お前の本来の力を見せてみろ〕


サタンが栞から離れ、消えたと思ったら

アルの隣に移動してる

栞は喉を抑え、ズルズル…と座り込む


「ケホッ…!ケホッ…!ゴホッ…!」

「「栞( 姉さん)っ!!」」


栞に駆け寄ると、サタンはクロトさんを片手で抱え


〔コイツは人質だ

 俺に勝てれば、コイツの体も魂も返してやるよ

 だから、必ず来いよ?〕


サタンが上に手を翳すと、黒い霧が勢い良く天井を突き破る


〔とりあえず、この国は俺達が貰う〕


その手が俺達に向けられると、強い風で吹き飛ばされ

ダァンッ!と廊下の壁に叩きつけられた


「ぐ…ぁ…っ!」


悪魔がニヤッと笑ってるのが微かに見え、扉が閉まっていく

床に落ち、飛びそうになる意識を必死に繋ぎ止める

栞と紫音も痛みを耐えながら、ゆっくりと起き上がる


「…っ、くそ…っ!」


グッ!と手を握る


「(何も…っ、何も出来なかった…っ)」


歯をギリッ…と噛み締める


すると、遠くから複数の足音が

顔を向ければ、兵士達が走ってきてる


「居た!反逆者だっ!捕らえろぉっ!」


兵士が俺達に向けて、魔法を放つ


「!…っな…!?」


魔力の塊が、目前に迫る

瞬間

サイコキネシス》で弾かれた


「走…ってっ!」


栞が防御してくれながら必死に廊下を走る

何で俺達を攻撃する!?

一体どうなってる!?

悪魔(1)

クロト兄さんが帰ってきて数日

兄さん…、兄様はお父様と学んできた事を話してる

呼び方は、再会した時に元々の呼び方でってお願いされたから


蓮と紫音はゼルファを相手に稽古をしてる

どれだけやっても傷1つ付けられないらしい…

でも2人は、最初の頃とは大違いで

魔力を使いこなし、持続も出来る

勿論私もだ

知識、武術、剣術、魔法

人並み以上に上達したと思う

 

稽古が終わったら街に出掛けるのが日課

毎日を皆で楽しく過ごしてる

そんなこんなで

国全体で、穏やかに幸せな日々を送ってる

 

 

アイツが現れるまでは…

気付いた時には、手遅れだった

 

 

ある日の夕方

ある人物が召喚魔法を発動する

魔法陣は黒い光を放ち


「や〜っと召喚してくれたかぁ

 これでや〜ぁっと、アイツに絶望を味わわせれる

 そして想像を絶する苦痛を以て死ぬんだっ!

 さあ、案内してくれ

 アイツの死に場所へっ!!」

 

 

ザキロ王side

夕食を待つ間に自室でゆったりと読書をしていると

コンコンッ


「お父様、クロトです」

「入りなさい」


ガチャッと扉が開き、クロトが近寄る


「何だ?」


クロトに目を合わせるが


「? クロト?」

「…」


何かがおかしい…

目は合ってるが、光が無い


「クロト、どうした?」


すると

クロトから黒い霧が出てくる


「!?」


クロトは表情を変えず、剣を抜く


「!? クロトっ!?」

〔主!〕


ワシの精霊が目の前に現れ、クロトが見えなくなったのと同時に

胸にズブッ!と剣が刺さった


「…っ、ク…ロ……ッ!」

〔へえ、流石一国の王 良い精霊持ってんなぁ〕

 

視界が霞んでいく中で見えたのは

クロトの横にいる、見覚えのある者の姿…

 

 

同時刻

蓮と紫音、ラルフや精霊達と自室で過ごしてると


〔!? シオリ様!〕

「レノ?」


レノが焦りの表情で


〔闇の力を感じます!それも国王の部屋で!!〕

「「「!?」」」

「手を!」


蓮、紫音と手を繋ぎ《テレポート》をしようとするも


「栞?」

「姉さん?」

「…っ」


何で?


「…《テレポート》出来ない…っ」

《!?》

〔…〕


レノが天井を見上げる


〔この城、…いえ、国全体に闇の力が働いています

 《テレポート》出来ないのは、その所為かと…〕

「国全体!?そんな大きな闇の力に皆気付けなかったのか!?」

〔…申し訳ありません

 私が皆様に光の加護を付与している所為です

 この加護は闇や悪魔の力から護るモノ、シオリ様のお力で効果が増大しています

 故に、気配すらも感じ取れなかったのです」

「レノ、そんな凄い加護をありがと」

〔…っはい〕

「とにかく、お父様の部屋まで急ごう…っ!」


もう少しでお父様の部屋に着く時

ふと…


「レノ、ラルフ、私の中に入って、…ゼルファも」

〔〔〔ですが(だが)っ!〕〕〕

「早くっ!!」


私の中に入るのを確認し


「蓮と紫音も、フェニアとジルを隠して…っ、早くっ!」

「栞、どうしたんだ?」

「分かんない…、けど、感じたの」


皆を護る為に、精霊を隠さなきゃって


お父様の部屋の扉をバンッ!と開くと


〔あぁあああああああああああっ…!?!?〕

「「「!?」」」


お父様の精霊が、黒い霧に侵食されてる!?

そして、精霊界に還る筈の魂をも黒い霧が飲み込んだ

精霊が消え、奥に居るお父様が見える


「「「!?」」」


お父様が…、血を流して


「お父様ぁっ!!??」

「「父さんっ!!??」」

「お?漸く来たかぁ」


黒い霧の横に1人


「!」

「!? お前は…!?」

「アル…っ!?」


黒い霧を纏うアルはニヤァと笑顔で


「久し振りぃ?

 あの後さぁ?君をどうやって殺そうか考えたら

 コイツが良い案を出してくれてね?」


アルが黒い霧を指差す

霧が徐々に薄くなっていき、現れたのは


「!? 兄…さ…ま…?」


兄様が緩慢な動作で振り返ると、光の無い…真っ黒な目で私達を見る


「ああ、案を出したのはコイツじゃないよ?

 ただ体を借りただけだ、ここに来る為にね?」


アルが兄様の背中をトンッと押すと、人形の様にバタンッと倒れる

アルは兄様に手を翳すと、黒い霧を剣の形に変えていく


「国王は死んでるけど、コイツはまだ生きてるよ?

 まだ、ね?」

「!? 止めてっ!!」

ドラゴン(11)

蓮side

紫音が皆を連れて自室に行ったのを確認して

改めて栞を見る


「…蓮?」


栞は立ち上がって、不思議そうに俺を見る

今の栞には犬耳と…、足の隙間から尻尾が少し見える

腰に手を回し、グッと抱き寄せる


「蓮?」


問い掛ける声を聞きながら、布越しに尻尾に触れる

ピクッと栞が反応し、尻尾も反応してネグリジェを押し上げる


「! れ…っ、何を「黙ってろ」」


出てきた白い尻尾を毛先から根元へと触ると


「ひゃ…っ!?」


ピクッと栞が跳ねる

グッと軽く握りながら根本から先まで動かす


「…っ、ふ…、…っん…」


栞が少し震えながら俺にしがみ付く

ピクッ…ピクッ…と尻尾が反応して、耳がヘニャ…と垂れる


「…栞」

「…はっ…、はっ…」


顎を掴んで上を向かせれば

頰を赤くし、涙目になってる


「…可愛い、いや…、エロ過ぎんだろ」

「ん!?」


唇を塞ぎ、啄んで

舌を入れて弄ぶ


「…ふ…、ん…っ…」


キスしたまんま尻尾を触ると

ピクッ


「ん…!…っふ…!」


栞が耐える様に俺の服をギュッと掴む

唇を離せば、ツ…と銀色の糸が

スル…と頰を撫で


「尻尾、フサフサで気持ち良いな」


耳を触ると


「ん…っ!」


ピクッと栞が跳ねる

片方は手で触り、片方は噛んだりしてみると


「…っん、…あっ…れ…やめ…っ!」


ビクッ…ビクッ…と栞が震える


「耳も感じるんだな」


試しに尻尾の根本を強めにギュッと握る

ビクンッ!


「!?あっ…!?」


栞はヘナヘナと俺に凭れる


「はっ…はっ…、れ…、も…ダメ…」

「そうだな。俺ももう…限界だ」


栞を抱き上げ、ベッドに寝せる

息を切らしてトロンとした目…

それに加えて感覚がある犬耳と尻尾

こんなの、この世界でしか味わえねぇ


「綺麗だ、栞」

「…蓮」

「こんな姿、他の奴には見せたくねぇな」

「…言われ…なくても、コレは、失敗…なんだから

 誰にも、見せたく…ない」


栞は顔を逸らす

黒髪の中にある白い犬耳は際立ってて

口を近付けて息を吹き掛ければ

ビクッ…と栞の肩が跳ね、耳がパタパタッと反応する


「…や、蓮…、それ、止めて…っ」

「コレか?」


耳元で喋れば

栞はギュッと目を瞑り、声を出さねぇ様に引き結んでる

指で唇をなぞれば、擽ったさに口を開けるから

その隙に指を差し込む


「!?…んぁっ…!?」

「口閉じんな

 折角犬耳と尻尾で普段よりも感じてるんだ

 声が聞きてぇ」


指をそのままに、犬耳を思う存分弄ぶ


「は…っ、あ…っ、ひゃめ…!」


止めてと言われても、俺にとっちゃ…ただの興奮材料だ

たっぷり犬耳を堪能してから離れて指を口から抜けば

栞は涙目で睨み付けてくる


「…っ、もう…イヤ…っ」

「イヤ?」


寝かした拍子に半分捲れ上がってるネグリジェの中に手を入れれば


「!?」

「イヤなら、何でこんなになってんだよ?」


栞は赤くなって顔を逸らす

顎を掴み、俺に向かせて唇を塞ぐ

舌で突けば口を開くから、栞のと絡め合わせる


「ん…、ん…っ、ふぁ…っ」


キスしてると、尻尾が俺の足にフリフリと擦り寄る

唇を少しだけ離し


「尻尾は素直みてぇだな?」

「!?…っち、違…っ」

「何が違ぇんだよ?」


尻尾をギュッと握り、強弱を付けながら撫でれば、ビクッ!と栞が跳ねる


「…っ、も…」

「ん?」

「…も…う、ホン…ト…に、ムリ…」

「ふ〜ん?なら…」


栞のお腹の下ら辺に手を当て


「一番敏感なとこを感じさせて、一旦終わらせてやるよ」

「…っ!?」

「夜は長ぇんだ、まだまだこれからだぜ?」

 

 

紫音side

翌朝、蓮は満足した様子でこっちの部屋に来たけど

姉さんは蓮が起こしに行くまで来なかった

 

 

数日後

皆で食事をしてると、外で歓声が響き始める


「?」

「何だ?」

「凄い声だね」


お父様がガタンッ!と立ち上がる


「帰ってきたか!?」

「確認してまいります」

「急げ!」


ソルが足早に部屋を出て行く

まさか…

 


お父様に言われるがまま、謁見室で待つ事数分

ガチャッと扉が開く


「お連れしました」


1人の男性が入ってくる


「お父様、ただいま帰りました」

「うむ よくぞ帰った」


男性の視線が私達に移ると、男性が目を見開く


「…っ」


男性がフルフルと震える


「お、お父様…、そこに、居るのは…」

「ああ そうだ」


お父様に促され、男性の近くに

男性は泣きそうな表情で私を見る


「シオリ、…君はシオリ、なんだな?」

「…はい え…っと、クロト…兄さん」

「! シオリッ!!」


ギュッ!と抱き締められる


「シオリッ!…シオリッ!!

 お前に会えるのを待ってたんだ!

 あの時からずっと!ずっとだっ!!」


少しクロトさんが離れ、頰を優しく包まれる


「ああ…、シオリ、俺の…妹」


今度は優しく抱き締められる


「シオリ、おかえり」


私も抱き締め返す


「ただいま、クロト…兄さん」


クロトさんと離れ、後ろにいる蓮と紫音も紹介する


「兄さん、紹介します」

「俺は蓮、栞の夫です」

「俺は紫音、栞姉さんの弟です」

「弟のシオン君に、夫のレン君…、…え、夫?」


バッ!とクロトさんが私に目を合わせる


「はい、蓮は私の夫です」

「夫…、おっと?…、夫…、夫ぉおおおおおおおおおおっ!?」


今度はお父様に目を向ける


「ホッホッホッ!真だ」


クロトさんはポカン…と呆然としてる


「フフッ、これからよろしくお願いします

 兄さん」


クロトさんは目を瞬かせた後、笑顔になり


「ああ、よろしくな」


その日は夜遅くまで宴が開かれた

ドラゴン(10)

ゼルファが家族になって数日

あれからゼルファは基本人型で生活してるけど

たまにラルフみたいに小型サイズ…子竜になって肩…じゃなくて頭に乗る

命を狙われてるって警戒もしてるけど

今は皆で穏やかに毎日を過ごしてる


ちなみに…


〔シオリ、これは何という食べ物だ?〕


ゼルファは長い時を森の檻の中で過ごしてたから

色んな料理やお菓子に興味津々

今では食事や休憩中のお菓子に一番敏感になってる


そして戦闘

人型になっても自在にドラゴンの皮膚に変えれる、爪も

しかも、かなり頑丈

物理攻撃は勿論、属性魔法が通じない

ドラゴンのじゃなくても、剣を人型の素手で受け止めたり…

それを見た時


「「チートかよ…」」


蓮と紫音がボソッと呟いた


〔ハハハッ!我はドラゴンぞ!人間の力など効かぬわ!〕

 

私達が思うに…

この世界で、最強じゃない?的な存在が家族になったと認識した


ついでに

私がゼルファの力を使う時、両目がゼルファと同じ様になるらしい

その内、体の竜化も上手く出来るって

 

 

ある日の夜

自室でのんびりしてると


〔我が主〕

「ん?」

〔ゼルファを受け入れた事により竜化が出来るのであれば…、

 我に近い姿にもなれますか?〕

「「(…それって、つまり…)」」

「それでなくても、元々姿を変えられるよ」

〔ほう…。シオリにはそんな力もあるのか!〕


蓮と紫音が考え込んでる内に

ラルフをモデルに《メタモルフォシス(動物への変身)》をしてみる

でもこの能力、最近使ってなかったから加減が…

 

 

紫音side

姉さんが光に包み込まれたけど、形が変わっていかない

光が消えたら


「…え」

「あ?」

「? 目線が変わってない、…失敗した」


姉さんが落ち込んでヘナヘナと座り込む


「「…」」


目を瞬き、茫然とする

ラルフが近寄り、姉さんの頰に鼻を擦り付ける


「ラルフ、ゴメンね。失敗しちゃった…」

〔いえ!とても可愛らしいです!〕

「? 可愛い?」

〔はい!〕


俺と蓮が固まってるのを余所にラルフは尻尾をブンッブンッ!と振って

姉さんに擦り寄ってる


〔ハハハハッ!半端な姿になってしまっておるのぅ!〕


ゼルファはスゴイ笑ってる

蓮をチラッと見れば、口元を隠してプルプル震えてる

ハッキリ言おう…

今の姉さんには、白い犬(狼)耳がある!

ネグリジェ(寝間着)で分かり辛いけど

お尻ら辺が膨らんでるから、きっと尻尾もある

失敗して落ち込んでる中、ゼルファから半端って言われたから耳がシュン…と垂れてる


俺達が何も言わないのをどう思ったのか


「蓮、紫音、…どう?」


姉さんが上目遣いで不安そうにコテン…と首を傾げる


「…、可愛いよ。姉さん」

「………だ」

「え?」

「…ムリだ」


蓮はボソッとそう言って


「レノ、フェニア」

〔〔はい(おう)〕〕


2人の精霊が出てきたところで、蓮が俺を見る

あ、はいはい…


「皆、今日はあっち(俺の部屋)で寝よ」


精霊はすんなりと部屋に行き


〔次は成功した姿が見てみたいぞ!〕


ゼルファも楽しそうに行った

俺は姉さんと離れたがらないラルフの首を引っ張りながら自室に入る


〔シオン!何をする!!〕

「…ラルフとレノは姉さんと感覚とかを共有してるんだっけ?」

〔それがどうした?〕

「明日まで、それを遮断するのって出来る?」

〔? 何故だ?〕

「いいから、出来る?」

〔可能ですよ、シオン様。ですが、何故その様な事を?〕

「…その方が姉さんにとっては、いい筈だから」

〔我が主にとって良い事なのか、ならばそうしよう〕


後は大人しく寝るだけだ


「蓮、程々にね…」

ドラゴン(9)

一方…


「クソッ…!クソッ!

 アイツ等!俺を裏切りやがってっ!!」


アルは誰も居ない、光の届かない場所で

1人、呪いに苦しんでいる


「あの女っ…、絶対に許さないっ!

 もっとっ…!もっと力が欲しいっ!!」

〔おいガキ〕


どこからか声が聞こえ

アルから黒い霧が出てきて、次第に人型になる


「お前っ…!なに力負けしてんだよ!」

〔ガキが、お前はアレだけが俺様の全力だと思ってんのか?〕

「あ!?」

〔アレはお前が今使える俺様の力だ

 要は俺様の力を使いこなせてないから、あんなのしか出せなかったんだよ

 あ〜あ、良い感じに負の感情に塗れた人間を見つけたと思ったのに…

 折角俺様が手を貸してやってるのになぁ?〕

「…っ…!」


手をギュッと握る


〔なあ?アイツ等はジュノ国の民だったな?〕

「それがどうした!?」

〔まあまあ聞けって

 確か今、王位継承者は国を離れてるなぁ

 なあ、知ってるか?〕


ソレはアルに顔を近づけ、ニヤァと笑顔を見せる


〔俺様ともなれば、神獣や精霊の魂を食っちまったり、殺せるんだよ

 本来精霊の魂は精霊界に戻り、草木に戻る

 神獣も同じ様なもんだ

 だが、俺様が食っちまったらそれは叶わねぇ

 一生苦痛を味わい続けるんだ

 それは人間も変わらねぇ

 そこでだ

 奴等に絶望を見せて、苦痛を味わわせてから殺すんだったら

 良い方法があるぜ?〕

「…、何だよ」

〔それはな?〕

ドラゴン(8)

傍観者side

アルの作った黒い霧がパンッ!と弾ける


「…っ!?…なっ…!?」


そこには栞達の他に

檻から解放されたドラゴンの姿が


「檻が!? だが…っ好都合だっ!

 今度こそお前を殺してやるっ!!!」


アルが闇の魔力を栞達に放つ


「レノ」

〔はい〕

《ガーディルシールド(守護の盾)》


バチンッ!と魔法が弾ける


「…っ!?何だと!?」

〔貴方の負の感情は絶大ですが

 その闇の魔力では勝ち目はありません〕

「クソッ!クソッ!!…クソッ!!!

 折角のチャンスだったのにっ!

 それをお前がぶち壊したっ!

 …ぐっ!?」


アルが腕を抱え、苦しみ始める


「はぁっ…!はぁっ…!今日のところは見逃してやる…っ

 次会った時はっ…、ドラゴンの前にお前を殺してやるっ!!」


アルは蹌踉めきながら森の中へと姿を消した


〔奴の気配が消えた…〕


栞はドラゴンに体を向ける


〔改めて、感謝する。レン、シオン、そして…、シオリ〕

「おう」

「ああ」

「これからよろしくね  ゼルファ」

〔うむ 其方に、この身を託そう」


ゼルファが光り、小さくなって栞に吸い込まれていく

すると

ドクンッ!


「…っぅ!」


栞は胸を抑えて蹲る


「「栞(姉さん)!」」

〔〔我が主(シオリ様)!〕〕


蓮が栞の肩に触れると

ジュッ!


「熱っ!」

「蓮!?」

「何だ…!?この熱はっ…」

「はぁっ…はぁっ…、ぅあ…っ!」


栞はドサッ…と横たわり、荒い呼吸を繰り返す


「栞!」

「姉さんっ!」


蓮が熱さを無視して栞を抱き抱え

紫音が栞の手を握ると


「何…、これ…」


栞の手や腕にはドラゴンの鱗が


〔…、恐らく、竜化だ〕

「「竜化?」」

〔ゼルファ…、ドラゴンを受け入れようとされ、影響が出てきている

 本来ならばコレで全身を侵食され、生き長らえてもドラゴンの支配化であろう〕

「それって…、つまり…」


蓮が不安気にラルフに問う


〔案ずるな、本来ならばと言っている。我が主なら大丈夫だ〕

「…、ラルフは、何で知ってるの」

〔神獣がそうだからだ

 もし真の主とは違う者と契りを求められ、無理矢理でも体に入らされれば

 体内から食い殺してやる

 ゼルファは我が主に敵意は無い

 消えるまでにどれだけ掛かるかは分からぬが…〕

「どれだけって?」

〔我が主といえど、ドラゴンを身に宿されるのだ

 人間がドラゴンを宿す事事態が、過去に無い事…

 鱗が消えれば、受け入れられたとみてよいだろうが

 恐らくは数日、長くて数ヶ月は掛かるだろう」

「っつう事は…、この状態が、もしかしたら数ヶ月続くって事か?」

〔…〕


ラルフは顔を顰めて俯く

だが

スゥ…と鱗が体内に消えていく


「「〔!?〕」」


熱も下がり、呼吸も安定する


「…、受け入れれた?」

「もう、栞は…、大丈夫なのか?」

〔…、ああ…、問題無い様だ…〕


蓮と紫音は胸を撫で下ろすが、ラルフは驚愕していた


〔(おかしい…。我が主といえど…、この数分で受け入れられたのか…!?

  それに、共有される筈の熱や苦痛が全く来なかった…

  …レノ)〕

〔(…ああ。私にもシオリ様が苦痛に耐えている事は伝わってきたが

  感覚としては何も来なかった…)〕

〔(…では、我が主はやはり…)〕

〔(ああ。私達が苦痛等を受けぬ様に、魂に何か細工をされた様だ

  情報だけが、伝わる様に…)〕

〔(…、誠に、お優しいお方だ)〕

〔(そうだな。誠に…、私達が仕えるに相応しいお方だ)〕

 

 

蓮side

栞を抱き上げ


「栞が落ち着いたし、帰るか」

「そうだね。…、どうやって?」

「…あ」


栞が意識を失ってる今、ジュノまで帰る手段が無ぇ


「ラルフは《テレポート》使えないのか?」

〔無理だ〕


レノやフェニア、ジルもムリ


「栞が目ぇ覚めるまで待つか?」

「それしか無いよねぇ…」

〔お主等、自国まで帰る手段が無いのか?〕

「「!?」」


栞からゼルファの声が


「おま…っ、意識あんのかよ!?」

〔我は回復の眠りに就こうとしておったわ

 だがお主等が騒がしくて眠りに眠れん〕

「ご、…ゴメン」

〔それで?自国への帰る手段が無いと?〕

「ああ、ここには栞の《テレポート》で来たんだ

 だから…」

〔左様か。ならば、我が連れてってやろう〕

「「…、は?」」


いやいや待て


「お前、力が弱まってんだよな?」

〔確かに今の我は弱っておる

 だが、お主等と国に帰る位の力はある」


瞬間

俺達は白い光に包まれ

目を開ければ、見知った部屋が


こうして、皆無事にジュノ国へ帰ってきた

 

 

目を開ければ

視界には、見慣れた自室の天井が


「…、帰ってきてる?」

「栞」


声の方を向けば、蓮が


「姉さん」


反対側には紫音が

それぞれの肩にフェニアとジルが


〔お目覚めになりましたか!〕

〔我が主!〕


顔の横に子犬サイズのラルフ

紫音の隣にレノが

皆がいる


「…何日、経った?」

「ゼルファと会ったのが昨日、今は夜だ」

「…、どうやって帰ってこれたの?」

〔我だ〕


蓮の後ろからもう1人

そこには…


「……、え」


白色の髪に青色の目、頭に2本のツノが


「…、まさか、ゼルファ?」


ゼルファがニッと口角を上げれば牙が


〔左様だ〕

「…」


まだ1日しか経ってないのに


「…、もう回復したの?」

〔うむ〕


蓮が溜息を吐き


「あの後、少しだけ力があったゼルファがここまで皆を《テレポート》したんだ

 数時間後には回復して、お前の中から出てこようとしたけど

 ここであの姿はマズイって事で人型になってもらったんだ」

〔ほれ、尻尾もあるぞ?〕


ゼルファの後ろで尻尾がフリフリと動いてる


〔出し入れ可能だ、翼もな〕

「そうなんだ…」


…っていうか


「回復するの、早くない?」

〔それは我も想定外だ〕


ゼルファが真面目な表情に


〔人間がドラゴンを宿すなど、過去にも無い事

 故にお主の身に何が起こるか、我も分からなかった…

 だが、お主は一時的な痛みと意識を失っただけで済み

 我もこんなに早くに回復した〕

「…」

〔シオリ、今はどこにも痛みは無いのか?〕

「何も…」

〔そうか…

 まあ我も回復し、お主も無事に目覚めた

 今はソレを喜ぼうぞ〕

「…うん」

「問題は、アイツだね」


紫音が顔を顰める


「アル、アイツはゼルファを殺そうとしてるけど

 最後に言ってた…

 ゼルファの前に姉さんを殺すって」


紫音と目が合う


「姉さんが狙われてる」

「大丈夫」

「え?」

「私には皆がいるから」


レノがニコッと微笑む


〔そうですね

 我々のお互いを信じる気持ち、何があろうと諦めない気持ちがあれば

 光は消えません

 皆がいるからこそ、闇に打ち勝てるのです〕


その時

バンッ!と扉が開き


「シオリ!目覚めたか!」

「シオリ様!」

「お父様、ソル…」

「目覚めて良かった!おかえり、シオリ」

「おかえりなさい、シオリ様」

「ただいま」

「さて!皆が無事に戻った!新しい家族も増えた!

 祝おう!」


お父様とソルがご機嫌に部屋を出て行く


〔シオリ〕

「ん?」

〔我を受け入れた事により、お主に少しだけドラゴンの鱗がある〕

「え、…どこに?」

〔手首だ〕


見ると片方の手首に白い鱗が1周回ってる

月の光で綺麗に光ってる

ジ〜ッと眺めてると


〔…、すまぬ…。女(おなご)には酷なモノであったか…〕

「ううん、綺麗だなぁって」

〔…そうか〕


ゼルファはホッと安心した表情を見せ


〔それと、2人にも〕


ゼルファの手には、ドラゴンの牙が


「俺達にも?」

「いいのか?」

〔うむ 家族になった証だ

 身に付け方は好きにせよ

 それに応じて、コレも変化する〕


蓮が胸に近づけると、牙から銀色の糸が出て首に掛かる

紫音が指に近付けると、牙の形が崩れて指輪に


「「ありがとう」」


ゼルファはニカッと微笑む


〔うむ! そしてな、ソレを身に付けておれば大抵の動物の心が分かる!〕

「?」

「心って…?」

〔つまり、動物の思いが分かるのだ!言葉が理解出来ると言っても良い!〕

「!?マジか!?」

〔…まじか、とは?」

「本当に?って聞いてるんだよ」

〔ほう!では!…、マジだ!〕


…ゼルファと蓮達のやりとりを見てる間、ずっと気になってる事が


「…っていうか、ゼルファ…。何でそんなにテンション高いの…」

〔む!?てんしょんとは何だ!?」

「…、何でそんなに気分が高揚してるのって事」

「栞、気分じゃねぇんだ。これがコイツの元々の素らしい」


蓮によると

檻に閉じ込められるまでは、動物が側にいるだけでマトモな話し相手がおらず

人間なんかに砕けた口調も使う筈も無く…

私達は家族になったから、今まで我慢してた素の自分を解放しようって事らしい


〔ああ!ついでに言っておくと、シオリは我の力が使える様になっておる!〕

《…え?》

〔我を体に受け入れたのだ!それ位の恩恵はあるぞ!〕

《………》

〔よし!祝いの席へ招かれるとしよう!〕


こうして、ドラゴンのゼルファが新たな家族になった