ドラゴン(6)

蓮side

精霊を宿して数日、俺達3人は朝から稽古場に居る

魔力を纏わせての模擬戦だ

最初は兵士と1対1で、次は紫音と連携して2対2で

栞は今日は治癒担当だ

精霊を宿してから、ちょっとした怪我ならすぐに治るが

今日は軽く本気でやり合うから大怪我しても大丈夫な様に


「ではレン様。始めましょうか」

「おう …フェニア」


呼べば、体内で熱いモノが湧き出てくる

魔力でブワッと風が舞い、前髪が靡く

今度はソレを剣にも纏わせる


チラッと紫音を見れば、同じ様にやってる


「余所見はいけませんよ?」


正面を向けば、すぐそこに兵士が

ガキィンッ!と剣がぶつかり合う

相手は俺と反対の、水属性の魔力を持ってる

火と水…相反するモノ同士

俺には上位の火の精霊が宿ってるが

上手く使えてなければ、どれだけ優勢でも負ける


戦ってる時、剣に纏わせる魔力は一定にしないと、すぐにバテる

剣だけに集中してると、今度は体に纏わせる魔力に偏りが出る


最初の頃はかなり苦労した

でも、この数ヶ月…

フェニアと話して戦い方も学んで

相棒と言ってもいい位、良い関係を築けてる


「行くぞ、フェニア」

〔ああ〕


一度落ち着いて、全身と剣に纏わせれる様にイメージして…

兵士が驚いて目を見開いてる隙を狙い、一気に斬り掛かるっ!

 

 

紫音side

蓮が兵士に斬り掛かってるのを横目に、俺も兵士と対峙する

火の精霊はパワータイプに対して俺の精霊は風、…つまりスピード


「…ジル」

〔おう〕


体内から力が湧き上がる

実は、体と剣に一定の魔力を纏わせるのは俺が先に出来てるんだよね

課題点はその次…、ソレを持続させる事

ジリ…ジリ…と俺の出方を伺ってる兵士に、ニコッと笑顔を向け


「行きます」


1歩駆け出せば、兵士は目の前

 

 

蓮と紫音が模擬戦をしてる間

私はソルに魔力操作を見てもらってる

全属性を持ってるって言っても、上手く使えなきゃ意味が無い

最初の頃は1つずつ手の平に属性の球を出す事から

次は2つ…3つと同時に出していって

今度はソレを体に纏い、自在に使える様にする

生まれ変わりのお陰か

体が自然と動き、頭でも…、何となくこうすればいいって出来る


「うんうん、上達してきましたねぇ」

「ありがと」

「そうそう

 光の精霊であるレノ殿と共にしているシオリ様は、治癒力が増している筈です」

「…、そうなの」

「はい それに光の精霊を宿す者は、光の加護が付きます」

「加護…」

「闇や悪魔の力に影響されにくくなるモノです」

「闇や、悪魔…、…レノ」

〔はい〕

「光の加護は、自分以外にも付けられる?」

〔可能ですが、永久的ではありません〕

「私の魔力を常に持ってる場合は?」


レノが蓮と紫音を見る


〔アレを通してならば、シオリ様が望まれる限り、付与は可能です〕

「じゃあ、お願い」


レノはニコッと微笑み


〔承知しました〕

「おっと、そろそろレン様とシオン様が共闘されるみたいです」


目を向ければ

蓮と紫音は目を合わせ、お互いに魔力を上げる

火と風…、合わせれば強大な力になる

2人の息の合った戦い方は、周りが関心する程


結果、まだ長時間の魔力の持続と操作が出来ない2人が負けたけど

それぞれの課題をクリア出来たみたいで、表情は晴れ晴れしてる


「お疲れ様」

「「お〜…」」


そこそこ本気のやり合いだったけど、大きな怪我は無い

擦り傷とかはみるみる内に治ってく


「丁度お昼だから、食べよ」


給仕の人が外で食べれる様に色々と準備してくれてる

 

 

お昼を済ませて休憩してると


「シオリ様ぁーっ!」


城で働いてる人が駆け寄ってくる


「ある者が国王を訪ねているのですが、シオリ様にもお会いしたいと」

「分かった」

「シオリ様、私は先に行っておりますので

 身なりを整えてからお越し下さい」


ソルが先に行くのを見送り、私達は自室に戻る

 

 

謁見室に入り、訪問者を視認しながらお父様の元へ

ちなみにラルフは私の中に入ってる

…全身をローブで覆ってる、フードで顔も見えない


「お待たせしました 私がシオリです」

「…貴女が、シオリ様…。一度死んで、帰ってきたという…」

「はい」


声は若い男性だ


「して…、シオリに何用だ?」

「シオリ様には、以前の様にお力があるんですか?」

「…、うむ」

「以前使役していた神獣は?」

「…、用件は何だ?」

「失礼 シオリ様が今現在でも神獣を使役しているのかが一番お聞きしたい事でして…

 シオリ様、昔に滅びたズメイ国は知っていますか?」


ズメイ国…

確か書物では、その地にいたドラゴンによって滅んだっていう


「はい、知っています」

「ドラゴンによって滅んだ事も?」

「はい」

「…ならば、用件はただ1つ

 そのドラゴンを殺すのを手伝って頂きたい」

「「「!?」」」

「僕は、ズメイ国の唯一の生き残り…」


訪問者がフードを外す


「アルと申します」


見た目は私達と変わらない

でも書物で読んだ限り、ズメイ国が滅びたのはかなり昔の筈

…って事は


「あの、失礼ですが…」


紫音がおずおずと声を掛ける


「何でしょう?」

「歳は、いくつですか?」


アルさんは首を傾げ


「数えるの止めたので、もう分かりません」


ニコッと笑顔で返される


「それで、どうですか?

 ドラゴンの討伐に力を貸して頂けませんか?」

「…あの」

「はい?」

「何故、私に?」


魔力はある

属性も持ってるから、それだけなら分かるけど

彼は、神獣の事も聞いてきた

この世界に来てから色んな生物や魔物を見てきたけど

ドラゴンなんて…


「シオリ様はこの世に存在する全ての属性を持っている

 それに加え、神獣も使役している

 こちらに帰ってこられて、以前よりも魔力が増していると風の噂でお聞きしました

 きっと貴女様なら力になってもらえると考えたのです」

「…」


お父様を見ると、顔を顰めてる


「…アル殿」

「はい」

「ドラゴンの居場所は分かっておるのか?」

「はい 

 ですので《テレポート》すれば一瞬で目的地に着きます

 シオリ様のお力をもってすれば、討伐もすぐに済みますでしょう」

「…」


お父様が私を見る

コク…と頷けば、お父様も頷く


「分かった 其方の願い、聞き届けよう」

「ありがとうございます!」

「だが、今日は稽古をして疲れておる

 討伐は、明日でも構わんか?」

「はい 構いません」

「ならば、明日までゆっくり休まれよ」

「ありがとうございます」


アルさんが謁見室を出て行った

お父様は椅子から立ち上がり、私の手を握る


「シオリ…」


不安そうな声

私は微笑んで


「大丈夫です、お父様

 すぐに帰ってこれるかは分かりませんが、必ず…帰ってきます」

「だが、ドラゴンなど…。ワシでさえ見た事すら無いというのに…

 未知のモノに、どれだけお前の力が通用するか

 心配で堪らんのだ」

「「大丈夫です」」


蓮と紫音が私の両側に


「俺達も付いてます」

「姉さんと絶対に帰ってきます」

〔〔〔〔我々も〕〕〕〕


ラルフやレノ、フェニアとジルまで…

お父様はニコッと笑顔になり


「ホッホッホッ、頼もしいのぅ

 では全員、必ず帰ってくるのだぞ!」

《はい!》